大阪地方裁判所 昭和31年(ワ)5017号 判決 1960年5月27日
原告 三羽鶴タオル株式会社
被告 浪速紡織株式会社
主文
一、登録第九一五三七号の商標権が存在しないことを確認する。
二、被告は原告に対して、右商標権につき、昭和二十一年二月二十一日訴外浪速紡績株式会社(大阪府泉北郡忠岡町忠岡六百七十四番地に本店を置いている。)の営業廃止のための権利消滅による抹消登録手続をせよ。
三、訴訟費用は被告の負担とする。
事実
第一、申立
原告は、第一次的に主文掲記のとおりの判決を求め、尚予備的に「被告が登録第九一五三七号商標権の権利者でないことを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決を求めた。
被告は、本案前の申立として「原告の請求を却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」旨の判決を求め、本案につき「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告とする。」旨の判決を求めた。
第二、原告主張の第一次的請求の原因
一、大阪府泉北郡忠岡町忠岡六百七十四番地に本店を置く浪速紡織株式会社(以下にこれを旧浪速紡と言う)は昭和十八年頃「三羽鶴」の文字を縦書した構成で、第三十六類タオルを指定商品とする特許庁商標原簿登録第九一五三七号商標権(以下本件商標権と言う)を有し、これをその製造販売するタオルに使用していたが、同会社は五十万円の資本金で額面五十円の株式一万株を発行し、そのうち原告の代表者である高尾一男が実質上自己並に妻名義及びその代表者である東和興業有限会社名義で合計千二百四十株を所有していた。
二、ところが旧浪速紡は昭和十八年九月十日、右高尾の反対に拘らず、株主総会の決議によつて解散し、被告の代表取締役である池田谷楠太郎が代表清算人に選任され、その後所有不動産を松下電器株式会社に、機械類を産業設備営団に、残余商品をその他の一般需要者にそれぞれ売渡して、昭和二十一年頭初頃には換価行為を終え、株主には残余財産の分配を四回に亘つて実施し、一株につき、第一回には三十円十銭、第二回には六十円、第三回には十五円九十銭、第四回には八円を分配しているが、殊に第四回には昭和二十一年二月二十一日に代表清算人が最終分配金として株主に対して同年二月二十二日より同月二十八日の間に受領され度い旨を通知しており、株券は既に昭和十九年頃に回収されていた。このようにして少くとも昭和二十一年二月末日には旧浪速紡は資本金が消滅し、営業は勿論のこと、営業用財産も皆無に帰した。
三、右のとおり、旧浪速紡が解散の決議をなしたことは不特定多数人に対して、継続的な収益事業の廃止、即ち営業廃止の意思を決定したこととなるもので、会社財産を換価して残余財産を株主に分配し、資本金が消滅したことは営業の廃止に該当し、この時を以て旧浪速紡がもつていた本件商標権は商標法(大正十年法律第九十九号以下同じ)第十三条により営業廃止のため消滅したのである。
四、ところで、元来タオルの販売業者であり、原告会社の代表者でもある高尾一男は昭和二十三年三月十三日、別に「三羽鶴」の文字を縦書した構成で第三十六類タオルを指定商品とする商標の登録を出願し、同二十五年七月二十四日に登録第三八七三八二号を以てその登録がなされ、右「三羽鶴」の商標権(以下これを原告の商標権と言う)をもつに至り、その後同人等が発起して設立した原告会社に営業と共に右商標権が譲渡され、現在原告会社が右の「三羽鶴」の商標権者としてこれを用いてタオルの販売を行つている。
五、他方、前記の池田谷楠太郎は同二十三年五月二十七日に他の者と共に発起の上被告会社を設立して代表取締役となり、既に右のように消滅した本件商標権が形式上商標原簿に抹消されずに残存し、旧浪速紡が清算結了の登記を怠つていたことを利用して、同二十五年三月七日に本件商標権を旧浪速紡より被告会社に譲渡してこれを移転登録し、被告会社も又本件商標を使用してタオルの製造販売を行つている。
六、このように、現在タオル業界には二つの「三羽鶴」商標が夫々使用されているが、本件商標権は、前述のごとく既に消滅し、存在しないのである。ところが、被告は依然として同商標権が存在することを主張するので、原告は右に述べたごとく原告の商標権を有する者として、被告に対して本件商標権の不存在の確認を求めると共に同商標登録の抹消登録手続を求めるものである。
第三、原告主張の予備的請求の原因
仮りに右請求が理由がないとしても、商標権の譲渡移転は営業と共にするのでなければ無効であるが、被告が前掲のとおり、昭和二十五年三月七日に本件商標権を旧浪速紡より移転登録を受けた当時、旧浪速紡には共に移転すべき営業は存在せず、営業譲渡のための株主総会の決議がなされた事実もない。従つて本件商標権の被告への譲渡並に右移転登録は無効であり、被告は本件商標権の適法な権利者でないから、本訴を以てこれが確認を求める。
第四、被告の本案前の抗弁事実
一、原告の本訴提起は次の理由により二重訴訟として却下すべきである。
(一) 原告が第二の四に主張している原告の商標権について、被告より特許庁にその登録無効の審判を請求し、同審判請求は特許庁昭和二五年審判第一四〇号事件として同二十八年二月二日に原告の商標登録を無効とする審決があり、原告が同審決について抗告し、同上抗告請求は同庁昭和二八年抗告審判第二九三号事件として同三十一年二月八日に抗告請求が成り立たないとの審決がなされ、次いで原告は東京高等裁判所に対して右審決の取消を求める訴訟(甲別件)を提起し、同事件が目下当事者間に繋属中であるが、本件と右の甲別件とは請求の基礎が全く同一でいずれが所謂「三羽鶴」商標権をもつかについての紛争である点で全く軌を一にし、原告としては上記の事件に於て判断を受けることにより、原告の商標権の存否が確立し、それで目的を達するのであるから、請求の趣旨がどうであるかに関係なく本訴は右甲別件に対する同一事件の後訴として却下されるべきである。
(二) 仮に右主張の理由がないとしても、本件原告の代表者である高尾一男が原告となり、本件被告並に旧浪速紡が共に被告となつて、大阪地方裁判所に於て旧浪速紡の営業廃止の確認並に本件商標が旧浪速紡より被告に移転されたことの無効の確認を求める訴訟(乙別件)が繋属しており、同別件で右原告は、第一次の請求として「被告両名は右原告に対し本件商標権の存在しないことを確認する。訴訟費用は被告等の負担とする。」予備的請求として「被告両名は原告に対し、本件商標につき両被告間で昭和二十五年三月七日になした商標権の移転が無効であることを確認する。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求めており同事件の態様を本件と比較して、原告が高尾一男個人であるか又は同人が代表者である本件原告会社であるか、及び旧浪速紡を被告に加えているか否かの相違はあるが、訴訟の内容に於ては全く同一である。即ち右別件の提訴当時は高尾一男個人が原告の商標権についての登録を得ていたので右乙別件を提起したものであるところ、その後原告が右商標権の移転登録を受けたため本訴を新たに提起したものであることが想像せられ、しかも原告会社は高尾一男個人の所謂個人会社と称して差支えなく、高尾一男個人が経営の主体としてその実権を掌握しているので、法人格が別個であるとの形式論ではともかく、実質的には同一の目的を以つて全く同一の訴訟を重ねて提訴したものに他ならず、本件原告としては、むしろ乙別件の訴訟承継をなすか或いは乙別件に対する参加の手続を践めば足り、之を要するに本件は乙別件に対する二重訴訟として却下されるべきである。
二、仮りに本訴提起が二重訴訟にあたらないとしても次の理由により原告には確認の利益がない。
(一) 確認の訴には即時確定の利益(確認の利益)の存在することが必要であるが、即時確定の必要とは、原告の法律上の地位の不安定を確認判決により全面的に除去されること、換言すれば主張する趣旨の確認判決を得ることが紛争解決に最も直截的にして有効適切な手段であることが必要で請求に対する確認を求め得ても尚紛争が残る場合にはその訴は確認の利益がない。即ち、権利の帰属につき紛争がある場合の訴についての確認の利益は、自己の権利の積極的確認を求めるべきで相手方の権利の消極的確認を求むべきでないのであるが、本件についてこれをみるに、原告の本訴請求は、主たる請求も予備的請求もその表現の差こそあれ、いずれも被告が所謂「三羽鶴」商標権の権利者でないことの確認を求める趣旨に他ならないが、仮に原告がこの請求につき確認判決を得たとしても、そのことの故を以て原告が直ちに右商標権の利権者とはならないのみならず、原告の商標権(商標原簿第三八七三八二号商標権)が争われる余地が尚ほ存すること甲別件の存在する点をみても明らかで、これを要するに原告の本訴請求は以上の観点より確認の利益がない。
(二) 仮に右主張の理由がないとしても、所謂「三羽鶴」商標については被告会社の商標権の登録が存在するのに、訴外高尾一男が更に出願して登録を得たため、一商標につき二登録の奇観を呈しており、現に右高尾より譲渡を得た原告の商標権につき東京高等裁判所に於て訴訟(甲別件)が繋属中であることは前に述べたとおりである。右甲別件に於て、被告は商標法第二条第一項第八号、九号所定の事由より原告の商標登録が無効であることを主張しており、被告の右主張が容れられ、原告の商標権が無効に確定することも程遠くないが、そうすれば、原告が「三羽鶴」商標の使用ができないのみならず、本訴に於て被告の商標権の不存在確認を求める利益をも失うわけであるから、甲別件が右のとおり確定する以前でもそのような判断を受ける結果となることが明らかで、これを要するに原告は本訴につき確認の利益がない。
(三) 更に右主張の理由がないとしても、訴外高尾は同人が多年タオル業者であり、且つ旧浪速紡の株主でもあり、「三羽鶴」商標の価値を充分に認識していたうえ、旧浪速紡が右商標を用いて事業の再開を計画していた事実を新会社設立に関する目論見書の送付を受けて熟知していた筈であるが、敢て「三羽鶴」商標の登録を出願したもので、商人道徳に反する行為であること甚しく、到底正当な権利行使とは言えないから、原告の商標権はこの観点からも無効であり、本訴に於て被告の商標権の不存在確認を求める利益がない。
第五、被告の本案に対する答弁
一、原告主張事実に対する被告の認否
(一) 原告主張の第二の事実について
第一項記載の事実はこれを認める。
第二項記載の事実中、原告主張の日に旧浪速紡の株主総会が解散を決議して池田谷楠太郎を代表清算人に選人し、代表清算人が主張のように各財産を換価し、主張の各回に各金銭の配当をし、同二十一年二月二十一日には一株につき八円の分配金の受領方を各株主に通知している事実はこれを認めるが、代表清算人が残余財産の換価を完了して、その分配を終了し、旧浪速紡が資本金を消滅して営業を廃止したとの主張は否認する。
第三項記載の事実は否認する。
第四項記載の事実については、高尾の登録出願並に原告の商標が商標法上適法な権利を有するものであることの主張を除いてその余の主張事実はこれを認める。
第五項記載の事実はこれを認める。
第六項記載の事実のうち、現在タオル業界では二つの「三羽鶴」商標が夫々使用されているとの主張事実のみを認め他は否認する。
(二) 原告主張の第三の事実について
原告の主張事実は否認する。
二、請求原因に対する被告の積極的主張
(一) 原告は旧浪速紡がその営業の廃止により、同会社がもつていた本件商標権が消滅したことを主張し、或いはその後の被告会社への右商標権が無効であるから、被告会社が現に本件商標権の権利者でないと主張するが、旧浪速紡の解散とその後の経過は商標法が定めている営業の廃止に至つていない。
(二) 商標法が定める「営業の廃止」と言う場合の営業の概念は客観的な組織体としての企業財産とこれを手段として営利活動を実施する商人の主観的な企業意思の結合した状態を言い、営業の廃止とは、客観的な企業財産が消滅するのみでなく、主観的な企業意思が決定的に終熄した場合に始めて営業の廃止があつたものと言いうるのであつて、しかも主観的な企業意思の終熄が営業自体の自発的な自由意思に基くことを必要とし、他より意思の拘束を受けて企業意思が終熄する場合を含まないものと考えるべきである。
(三) いまこれを本件について述べるに、先づ客観的な企業財産が原告主張のように消滅したか否かをみると昭和二十年三月三十日の旧浪速紡の臨時株主総会に於て「残余財産(本件商標権のこと)についての処分、分配並にその時期方法は清算人に一任する」との決議がなされており、本件商標権は大正末期に於て金五万円もの価値があつた主要な会社財産で、清算人は、これ以外の財産は原告主張のとおり、大略換価処分して株主に分配しているが、右商標権はこれを換価処分せず、企業の再開にそなえていたのであるから旧浪速紡はその範囲で法人として存続しており清算は未だ結了していなかつた。この間の事情は終戦後営業復元許可がおりてからの旧浪速紡の動向にも表われており、旧会社の役員が発起人となつて直ちに旧会社の株主に新会社設立を呼びかけ、本件被告会社の設立となつたのであるが、商法第四百六条による旧会社の事業再開手続によらず、新会社の設立の方法に依つたのは、単に発起人等の法律知識の不足と、新会社による気分の一新が意図されていたもので結局旧浪速紡が清算を結了して営業を廃止していなかつたことの徴表である。
(四) 次に主観的な企業意思の終熄についてこれをみると、旧浪速紡が解散した昭和十八年九月十日当時は今次大戦の最中であるから、政府の方針により、すべての平和産業が軍需産業に転換を余儀なくされており、タオル業者もこの例に洩れなかつたので、一般的には当時の強制的な企業廃止方法としての企業整備令に基く廃止命令の適用を受ける以前、すでに企業整備に関する行政官庁の指導斡旋の形式で企業自身が自らこれを廃止する方向に仕向けられていたのであつて、名目は指導に基く自発的な企業廃止であるが、その実は、行政官庁のこの指導に従わない場合には国賊的な取扱いをうけて企業整備令の適用を受け、強制的に廃止させられるであろうことは容易に推測された。しかも、旧浪速紡はタオル業者として全国第一の設備をもち、その代表者であつた池田谷楠太郎個人が当時の商工大臣であつた岸信介と個人的にも親しい関係であつたため、率先して指導に従うよう要請されていた事情で、やむなく株主総会の決議による解散の方式により清算に入つたのである。従つて旧浪速紡の解散は企業自身の自発的な自由意思で清算を開始したものとは言えず、全く企業整備令によつて企業廃止命令を受けたものと同視すべきである。そして右のような事情のもとに清算を開始した場合には商標法所定の営業廃止に当らないと解するのが最近の裁判例の多くが示すところである。
(五) 次に原告の予備的主張につき述べると、先づ旧浪速紡が本件商標権を被告会社に対して譲渡するに当り、その要件となるべき譲渡のための特別決議がなかつたと主張し、被告もその事実については争わないが、本件商標権の譲渡は、形式的には旧会社より別人格者たる被告会社に対して権利移転の方式をとつているが、実質上は被告会社が旧浪速紡の事業の再開であること前に述べたとおりであるから、右のような場合には商法上株主総会の特別決議を必要としないと解するのであるが、仮に決議を必要とする場合に当るとしても、今後旧浪速紡の株主総会を開催して右譲渡行為を追認する方法があり、原告代表者等を除いてこれに反対する者がないから、このことより右の譲渡を無効とする理由がない。
更に原告は、商標権の譲渡は営業と共にしなければならないところ、旧浪速紡は当時既に営業廃止のため共に移転する営業が存在しなかつたと主張するが、旧浪速紡が営業を廃止していないことは前に述べたとおりであり、被告の場合は清算会社の事業の再開に当るのでこの問題が起きないと考えるが、仮にそうでないとしても、商標権の譲渡に随伴する営業の譲渡については、学説、判例共に、これを具体的な企業組織を個々別に譲渡しなければならないとは理解せず、極めて抽象的に、権利者の指定商品についての営業意思を承継するだけに足りる、と理解し、この方向に法改正の動向もうかがわれるところ、旧浪速紡に於ても、商標権及びその他若干の財産はこれを換価せずに残していたのであつて、被告会社は旧浪速紡の営業意思と得意先とを商標権と共に譲り受けたのであるから商標権移転の要件を充足している。
第六、被告の主張に対する原告の反駁
一、二重訴訟の抗弁について、
(一) 原被告間には、被告が主張するような経過で東京高等裁判所に、同庁昭和三一年行(ナ)第七号事件として特許庁の昭和二八年抗告審判第二九三号事件の審決の取消を求める事件(以下甲別件と言う)が繋属中であることは争わないが、甲別件は特許庁の抗告審判でなされた審決の取消を正当とするか否かを訴訟物とし、本件訴訟は、本件商標権が商標法上適法な権利として存在するか否かを訴訟物とするものであつて、明らかに訴訟物を異にするうえ、両事件は夫々その判決の既判力が及ぶ範囲を異にするので二重訴訟の関係にない。
(二) 次に被告が主張するとおり、本件原告の代表者である高尾一男を原告とし、本件被告並に旧浪速紡を共に被告として大阪地方裁判所に同庁昭和二六年(ワ)第三三六一号営業廃止確認並に商標権移転無効確認請求事件(以下これを乙別件と言う)が繋属している事実は認めるが、乙別件と本訴とはいずれも当事者を異にするので両事件は二重訴訟の関係にない。
二、原告が本訴につき確認の利益をもたないとの抗弁につき、
本訴では原告がタオルの販売を業とする者であるが、タオルを指定商品とする本件商標が商標法上は既に権利でなくなつたに拘らず、未だ権利として存在すると被告が主張するので、タオル業者として原告が被告の右主張が正当でないこと、即ち本件商標権が既に権利でなくなつたことにつき即時確認を求める利益を有するのであつて、このことは原告が「三羽鶴」の商標につき登録をもつと否とに拘らない。従つて、被告が本件商標権につき、その権利消滅を自認し、「三羽鶴」商標の使用を廃止したときは原告が本件につき確認の利益をもたないことになるのである。
三、被告の積極的否認につき
(一) 次に被告は、本案の答弁に於て、旧浪速紡は自発的な自由意思に基いて解散したものではない、と主張するが、同会社の解散は全く営利的な考慮を中心とする株主総会の自発的な自由意思により解散したものである。被告は同会社の解散を昭和十七年五月十三日勅令第五百三号企業整備令による企業廃止命令と同視すべき外部的強制がなされた結果であると主張するが、右勅令は当時の戦時体制下に於て、「国民経済の総力発揮に資するため、企業を整備し、又は之がため事業に属する設備若は権利の利用を有効ならしめることを目的とする」のであつたが、そのためには平和産業が軍需産業に企業設備を供出して休業することで必要且つ充分であり、企業廃止を招くような解散の決議までする必要はなかつたのである。
ところが、当時旧浪速紡の株主等は、原料の配給が少いうえ、その品質も悪く、更に税金が高くて採算がとれない反面、解散によつて残余財産を分配する方が有利であるとの営利的考慮に基き解散を決議したものに他ならない。
被告主張の如く当時の行政官庁が右勅令の趣旨に沿う強力な指導斡旋を行つた事実については原告も争わないが、当時といえども法規の範囲内で自主的な判断による行動をする自由は保障されており、現に大阪府下のタオル業者二百八十七業者(昭和三十一年五月一日現在である。)中右のごとくして戦争中の苦難に堪えて営業を継続してきた者が三十七業者、営業を休止若くは中止して、戦後に復元した者が約四十四業者存在することが右勅令は企業の解散を必要としなかつたこと並に指導斡旋が解散を強制したものでない事実を示すに充分である。
(二) 更に被告は、旧浪速紡と被告が実質上同一の企業体である、と主張するが、両者は法人格に於ても経済上に於ても全く別個の企業体である。
旧浪速紡の株主は六十名であつたが、被告会社の設立に参加した株主はそのうち僅かに十三名にすぎない。原告の代表者である高尾一男は旧浪速紡の株式総数一万株中千二百四十株を実質的に所有していたが被告会社の設立には参加せず、被告会社はその代表者である池田谷楠太郎が実質的に総株式の四割を所有して設立されたものである。
このように両者が法律上経済上別個の企業体であるかぎり、被告の営業の開始を以て旧浪速紡の営業の再開と解することは、到底容認できないことである。
第七、証拠
原告は、甲第一号証乃至同第十三号証、(同第一及び第十一号証は写を以て提出)同第十四号証の一乃至三、同第十五号証の一乃至五、同第十六号証の一乃至三、同第十七号証を提出し、原告代表者高尾一男本人尋問の結果を援用し、乙号各証については、乙第三号証の原本の存在並にその成立を認めたうえ、乙号各証の成立を認めた。
被告は、乙第一乃至第六号証(同第三号証は写を以て提出)、同第七号証の一、二、同第八乃至第十二号証を提出し、証人尾池厚平、同内堀弥四郎、同後野坦三郎、同宮下豊松、同魚住孝次郎、同小沢利雄の各証言を援用し、甲号各証については、甲第一号証、同第十一号証の各原本の存在並にその成立を認めたうえ、甲号各証の成立を認めた。
理由
一、(一) 大阪府泉北郡忠岡町忠岡六百七十四番地に本店を置き、資本金五十万円、発行株式一万株でタオルの製造販売を業としていた旧浪速紡が、「三羽鶴」の文字を縦書した構成で第三十六類タオルを指定商品とする登録第九一五三七号商標権(本件商標権)を有していた事実。旧浪速紡は昭和十八年九月十日、株主総会の決議によつて解散し、被告の代表取締役である池田谷楠太郎が当時代表清算人に選任され、昭和十九年頃株式の回収を行うと共にその所有不動産を松下電器株式会社に、機械類を産業設備営団に、残余商品はこれを一般需要者にそれぞれ売渡して換価し、株主に対しては一株につき第一回目に三十円十銭、第二回目に六十円、第三回目に十五円九十銭の残余財産の分配を実施し、昭和二十一年二月二十一日に第四回目として八円を同月二十二日より同月二十八日迄に受領せられ度いとの通知を発していた事実。池田谷楠太郎が昭和二十三年五月二十七日に他の者等と発起し、被告会社を設立してその代表取締役に就任し、旧浪速紡の株主総会の決議を経ることなく、同二十五年三月七日、本件商標権を旧浪速紡より譲受けたものとしてその移転登録を行い、現在では被告が本件商標権を用いてタオルの製造販売を行つている事実。
(二) 本件原告の代表者であり、タオルの販売業者であつた高尾一男は、もと旧浪速紡の株主であり、自己名義、妻名義その他の名義をもつて、同会社の株式千二百四十株を所有していた者であるが、昭和二十三年三月十三日に「三羽鶴」の文字を縦書にした構成で第三十六類タオルを指定商品とする商標の登録を特許庁に出願し、同二十五年七月二十四日、商標原簿第三八七三八二号を以て登録(原告の商標権)が行われたところ、その後同人等が発起して設立した原告会社にその営業と右商標権を譲渡し、現在原告も又「三羽鶴」の商標を用いてタオルの販売を行つている事実。
(三) 原告の商標権については、被告から特許庁に登録無効の審判請求がなされ、同事件は特許庁昭和二十五年審判第一四〇号事件として、登録を無効とする審決があつたところ、原告は同審決について抗告し、同上抗告請求が同庁昭和二十八年抗告審判第二九三号事件として同三十一年二月八日に抗告請求が成り立たない、との審決がなされたため、原告より東京高等裁判所に右審決の取消を求める訴訟(甲別件)を提起した事実。
(四) 本件原告の代表者である高尾一男が原告、本件被告並に旧浪速紡が共に被告となつて、当裁判所に於て同庁昭和二六年(ワ)第三三六一号営業廃止確認並に商標権移転無効確認請求事件(乙別件)が現在繋属中であるが、同事件では、その原告が第一次的請求として、「被告両名は原告に対し本件商標権の存在しないことを確認する。訴訟費用は被告両名の負担とする。」予備的請求として、「被告両名は原告に対し、本件商標につき両被告間で昭和二十五年三月七日になした商標権の移転が無効であることを確認する。訴訟費用は被告等の負担とする。」との裁判を求めている事実。
はいずれも当事者間に争いがない。
二、そこで被告の本案前の抗弁について検討することとする。
(一) 本訴が甲別件と二重訴訟の関係にあるとの主張について、
被告は甲別件と本件訴訟は共に請求の基礎が同一で、原被告のいずれがいわゆる「三羽鶴」商標の権利者であるかが紛争の基礎であると主張し、両事件が「三羽鶴」商標と言う一個の権利客体をめぐる紛争であるかのごとくに主張するが、タオルを指定商品とするいわゆる「三羽鶴」商標には、登録第九一五三七号商標権(本件商標権)と登録第三八七三八二号商標権(原告の商標権)の二個の登録が存在し、甲別件は原告の商標権についてその登録を無効と判定した行政官庁の処分の適不適を訴訟物としているのに対し、本件訴訟では商標法上本件商標権が存在しているか否かを訴訟物としており、両事件は互に請求の基礎を異にするのみならず、一個の商標権に対する紛争ではなく、訴訟物は別個であるから、本件訴訟が甲別件の二重訴訟であるとの被告の主張は理由がない。
(二) 本訴が乙別件と二重訴訟の関係にあるとの主張について、
二重訴訟が禁止せられている最も主要な理由は、二個の事件について各々異つた判断がなされる場合に生ずる判決の覊束力の矛盾牴触を防ぐためであるが、両事件が当事者を異にする場合には、判決の覊束力が互に矛盾牴触する事態が起り得ず、その両事件は形式的にも実質的にも同一事件ではないと解するのを相当とする。しかるに、本訴との乙別件が互にその当事者を異にすることについては当事者間に争いがない。
更に、他人間の訴訟に参加して自己の権利を主張する方法と自己が別訴を提起して自己の権利を主張する方法の二つが可能な場合に、そのどちらを選択するかは各当事者の自由に委ねられており、必ずしも訴訟参加の方法を強制されない、のみならず、他人間の訴訟に参加を許されること自体がその訴訟と参加人の請求とは互に二重訴訟でないことを意味するわけである。これを要するに被告の右抗弁は主張自体理由がない。
(三) 本訴請求は、原告にとつて確認の利益がないとの主張について、
確認訴訟については、一般的に即時確定の必要がなければならないことは被告主張のとおりであるが、これを本件についてみる場合、いわゆる「三羽鶴」商標権と言う抽象的な一個の商標権が存在し、その権利の帰属について争われているのではないから、積極的に原告の商標権についての存在の確認を求めなければ確認の利益がない、と言う被告の主張は誤りである。当事者間に争いのない事実によれば、いわゆる「三羽鶴」なる縦書文字を要部とした本件商標とこれに類似する原告の商標が登録せられ、原告はこれを本件商標と同一指定商品たる「タオル」に使用しているのである。しからば、原告としては、原告の商標が商標法上適法に保護せられ、原告がこれを使用する自由を有するものであることを明確にするためには、本件商標権が商標法上既に権利として存在しないことの確認を求めるにつき利益を求めるにつき利益を有するものであつて、即時確定の必要があることはあきらかである。更に、既存の登録商標について、それが指定される商品と同類の商品を製造販売する商人は、その商標権が消滅したときは、特別の事情がない限りこれと同一又は類似の商標を自己のために登録を受け、又は登録を受けないでこれを使用できるものである。従つて原告は本件商標権の存否について正当なる利害関係を有するものであるから、これが登録の抹消登録を求めるのみならず、権利の消極的確認を求めるについても、その必要と利益を有するものである。従つてこの点に関する被告の主張も採用できない。
三、以上に判断のとおり、被告の本案前の各抗弁は理由がないから進んで本案につき判断することゝする。
原告は、被告が本件商標を旧浪速紡より譲受ける以前に、同会社がその営業を廃止していたため、商標法第十三条により本件商標権が既に消滅していたと主張するので、旧浪速紡が原告主張の頃にその営業を廃止していたかどうかを検討する。
成立に争いのない甲第二、三、四号証同第八号証、原本の存在並にその成立につき争いのない同第十一号証、成立に争いのない同第十四号証の二、三同第十五号証の二、四、五成立に争いのない乙第二号証、証人尾池孝平、同内堀弥四郎、同魚住孝次郎、同小沢利雄、同宮下豊松、同後野坦三郎の各証言並に原告代表者高尾一男本人尋問の結果を綜合すると、昭和十四年九月に勃発した今次の大戦を契期として、綿糸布を原料とする製品の製造販売に国家の統制が加えられることゝなり、タオル工業に対する原料の配給統制が漸次強化されるに従い旧浪速紡においてもその業績が低下して行つたが、昭和十八年上半期には、遂にその経営採算に赤字が生ずることゝなつたこと、当時戦局の激化に伴い軍需生産に主力を注いでいた政府当局の方針により、昭和十七年五月十三日勅令第五百三号企業整備令の趣旨に沿つた企業の合同、若くは転廃業等の指導斡旋を受けていた際でもあつたため、旧浪速紡は昭和十八年九月十日の株主総会に於いて解散を決議し、清算手続に入つたこと、同社の清算人は株主総会の決議に従い同十九年には発行株券を手許に回収し、同会社に残存した材料はこれを全部製品化して処分し、土地建物等はこれを訴外の松下電器株式会社に売却し、機械等の工場設備はこれを産業設備営団に譲渡して、同二十一年迄には換価しうる財産のすべてについて換価を終了し、同年二月二十一日に全株主に対して清算事務の完了を報告すると共に清算所得税及び清算諸経費を控除した最終の残余財産分配金の支払通知を発し、同月末日までにその受領方を連絡していたことが認められ、この認定をくつがえすに足る証拠はない。
ところで、被告は本件商標権が大正末期に金五万円の価値があつた主要な会社財産であるが、清算人が戦後の営業再開に備えてこれを換価処分せずにいたのだから、会社財産のすべてを換価処分したものとは言えない旨を主張し、本件商標権が当時換価処分されていない事実については当事者間に争いがない。しかしながら、戦後の営業再開に備えて積極的に本件商標権の保存を意図してこれを換価処分しなかつたとの趣旨に沿う甲第十四号証の二、同第十五号証の二、四、の供述記載及び、証人後野坦三郎の各証言は、成立に争いのない甲第八号証により認められる昭和二十一年二月二十一日に清算人がその清算事務を完了して最終分配の通知を発している事実及び、成立に争いのない甲第十一号証に昭和二十一年十月十五日現在における旧浪速紡の貸借対照表には、本件商標を資産として評価してこれを同表に記載する処置をとつていないことから窺い知られる右貸借対照表が作成された当時旧浪速紡の清算人は本件商標権が主要な残余財産権であるとは考えていなかつた事実があるので、これをたやすく信用することができない。更に商標が財産権として金銭的な価値を有するのは物資の供給が潤沢であつて、需要者が商品選択の自由を有する場合に限ると考えられるところ、昭和十八年九月頃より同二十一年二月頃までのわが国内においては戦争のため物資は著しく欠乏していてすべての生活必需品が厳格な生産と配給の統制を受けており、綿製品もこれが例外をなすものではなく、需要者に商品選択の自由がなかつたし、昭和二一年二月頃は経済はもちろんのこと、国の将来についてすら予測することができない終戦後の混乱状態にあつたという公知の事実及び証人後野坦三郎の証言より容易に窺うことができるタオル製品に対する商標権についても、当時は財産権として価値のあるものとは考えられておらず、換価処分しようとしてもこれを譲受ける者がない状態であつた事実を合せて考えると右被告主張の事実はこれをそのまゝ信用して採用することができない。なお仮に旧浪速紡の清算人が被告主張の如き意思を有していたとしても営業の再開に備えるということは解散と相矛盾することがらであつて、もとより清算手続に属するものではなく、又そのような事項の決定を清算人に委ねたり又はその趣旨の株主総会の決議があつたことについてはこれを肯定するに足る証拠がないから、右清算人の意思が直に旧浪速紡の意思に代るものということができない。
次に、被告は、旧浪速紡の解散は企業整備令の趣旨に沿う政府の強制的な指導斡旋の結果によるもので、純粋に企業自身の自由な自発的な意思に基くものではないから、このような解散による清算終了は商標法所定の営業廃止に該当しない、と主張する。そして旧浪速紡の解散には被告の主張するような当時の行政方針に基く政府の強力な指導斡旋が主要な動機となつていた事実は前に認定のとおりである。しかしながら、商標法に定められた営業の廃止とは、ある企業がもつている商標権について、指定を受けている商品に関し、その製造ないしは販売を行わない決定的な意思が客観的に外部より認識しうるような事実状態にあることを指し、そのような状態を招来した動機如何を考慮した概念ではないと解するのを相当とするので、被告の右主張はそれ自体理由がなく、採用するに由がない。
ところで、旧浪速紡の清算人はその後現在まで決算報告書承認のための株主総会を招集せず、清算結了登記の申請をもしていないし、反対に同会社を再開して継続するための株主総会をも招集していないのである。そして前者の総会招集並に結了登記の申請をしなかつたことについては、成立に争いのない甲第十五号証の四により清算人がそのような手続を必要とすることの知識がなかつたことに由来するものである事実が認められる。後者のような株主総会の決議のないことについて、被告は、実質上同一の権利主体として被告会社が設立されているので旧会社については右の決議を必要としないと主張するが、夫々別個に設立登記をなして法人格を異にしている会社であることが主張自体より明らかであるから、仮に同一の構成員によつて新会社が設立されたとしても、その設立が清算中の別の会社の企業の再開継続であるとは解し得ないのみならず、後に認定するように旧浪速紡はすでに法人格を消滅していたと解されるので最早や事業を継続して再開する決議の途もなかつたわけである。以上に認定した事実より、旧浪速紡は昭和十八年九月十日の解散決議で清算手続に入り、清算人が同二十一年二月二十一日清算事務の完了を各株主に報告する通知を発したことにより営業廃止の意思が外部に表示せられたものであつて、その頃タオルの製造販売に関する営業を廃止したものと認定するのが相当である。
そこで解散に政府の強制的な意思が加えられた場合の清算事務の終了は商標法が定める営業の廃止に当らない、との被告の主張を、そのような営業廃止に対しては商標法第十三条が定める効果を受けないとの趣旨と解するとして、更に検討してみることとする。右の認定事実によつてもあきらかなとおり、清算に入つてからは換価処分のできる全財産はこれを換価し、最終の残余財産の分配を立案してこれを実施するため、その受領方を各株主に連絡しており、その後においては、成立に争いのない甲第十一号証によれば、清算人の手許に僅かに二、三の株主に対する未交付の最終分配金、一、二の職員に対する退職慰労金の預り金、並に清算事務の経費に当てる若干の金員が残存しているにすぎない状態になつていた事実が認められるから清算の結了を承認する株主総会の決議とその登記手続がなされてはいないが、同上諸手続の未了にも拘らず少くとも最終の分配金が右二、三の株主を除く他の全株主に受領されることにより、旧浪速紡の法人格は、わずかに右未了の清算手続の範囲内においてのみ存続するも、一般的には消滅したものと解するのが相当である。
前掲の企業整備会の目的自体が、企業に属する設備若くは権利の利用を挙げて戦争遂行のための軍需生産に転換させるため、これを整理統合廃止させることが目的であつたから、その趣旨に従つて或る企業を解散し、その企業のもつ諸設備ないしは利用しうる有効な権利等を当時に必要とした軍需生産方面にふりあてられた以上、その企業が消滅することは一般の企業の消滅の場合と何等異るところがなく、この場合にのみ特に法人格が消滅せずに残存するものと解すべき理由も見当らない。成立に争いのない乙第十一、十二号証によると昭和二二年八月商工省産業設備再建委員会の決定により旧浪速紡の工場の復元が大阪府より許可せられ、被告会社を設立してタオル製造業を復活したことが認められるが、右工場の復元許可は物資統制の関係上なされたものであつてこれにより消滅した法人が当然復活するいわれがないのである。
そして無体財産権の性質上権利の主体が消滅しているのにその客体である本件商標権のみが存在することはあり得ない。結局本件商標権は旧浪速紡が昭和二十一年二月二十一日当時、その営業を廃止したことにより、消滅したものと認められ、これが不存在の確認を求める原告の本訴請求は理由がある。
四、そこで本件商標登録の抹消登録手続を求める原告の請求について判断する。
原告が本件商標権と同じ「三羽鶴」の文字並にその配置によつて構成される類似の商標についての登録権者であり、同一の指定商品であるタオルの販売業者であつて右商標を使用しており、被告が本件商標権を旧浪速紡より譲受けたものとしてその移転登録を受けたのが、昭和二十五年三月七日である。そうすると本件商標権が既に消滅した後に被告がこれを譲受けたことゝなり、有効にこれを譲受けるに由なかつたものであるに拘らず、現に登録原簿上に本件商標権が登録せられていて、被告が右譲受による権利者となつているものであるから、原告は正当なる利害関係人として被告に対しこれが抹消登録手続を請求する権利がある、と解される。そこでその履行を求める原告の本訴請求も又理由がある。
五、以上に判断のとおり、原告の第一次的請求がいずれも理由があるから、これを正当として認容することゝし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 前田覚郎 山中孝茂 石垣光雄)